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① 輸入申告時に用いたHSコードが不適切なHSコードと指摘され、脱税扱いで追徴課税を課せられた。

  6桁までは輸出申告に用いたHSコードを用いていたが、この部分については問題のないHSコードで

  あると日本税関等にも確認し説明を行ったが、インドネシア税関が納得しなかった。

 

通関トラブルの背景

  開発途上国向けの貿易で怖いのがこの正論が通じないという現象です。

  HSコードはその番号のつけ方(品目分類の基準)についてはHS条約で規定されており、

  加盟国ではそれらのルールに基づいて番号が決定されております。

  理論上はどの国でHSコードを判定しようが、同じ番号になるはずなのですが、

  実際にはかなり違った結果となります。

  HSコードは輸出側は輸出国税関、輸入側は輸入国税関に決定権があります。

  先進国の多くには通関の前に何番のHSコードで通関するのが妥当かを確認するための「事前教示制度」

  が存在しますが、インドネシアの場合、この制度が事実上ありませので、事前に税関に判断を仰ぐことも

  できません。

② 輸入時にはHSコードごとに設定されている様々なライセンスがあるが、所定のライセンスを取得して

  いなかったため、通関ができずに止まってしまった。

 

通関トラブルの背景

  輸入者として保持するAPI-P (製造業者向け)API-U (非製造業者向け)といったライセンスだけではなく

  個々の品目についてもライセンスを求められることがあります。

  このため、インドネシアへの輸出前には、その品目にライセンスが必要かどうか輸入側に確認しておく

  必要があります。

  輸送業者の多くは、ライセンスの有無が判明しない場合、日本からの輸出通関を引き受けないため

  事前確認は必須となります。

③ 輸入時にライセンスが必要な品目であったため、これを避けるために、実態とは少々異なるHSコードを

  つけて毎回通関していたところ、HSコードの品目分類の違いを指摘され、過去数年にわたって遡った

  追徴金を支払うことになった。

 

通関トラブルの背景

  多くのインドネシア企業の輸入担当者の間では、輸入時にライセンスのかからないHSコードにして

  輸入申告している例はよくあります。

  実態に沿う内容であれば問題はありませんが、実物とかなり異なるHSコードをつけて申告している

  例も数多くあります。

  ライセンスの取得に時間を要したり、煩雑な手続きを嫌ってこのようなことを繰り返す会社の多くには

  きちんとした輸入担当者 (インドネシアの輸入業務に精通したスタッフ)がいないこともあり、

  あとから数年分もの膨大な追徴金を科せられるケースもあります。

  特にグループ会社間での取引において注意を要するのは、現地側で被った追徴金などの損害が、

  連結決算対象の現地法人の会社であれば、結局、日本の本社側の損失になるという点です。

  一般には「輸入者の責任」で片づけられるのですが、日系グループの会社間の取引などでは、

  こうした割り切り方ができるわけではありません。

  専門知識に長けたスタッフが不足している現地の製造拠点にすべてを押し付けたり

  責任を擦り付けるようなことも散見されます。

④ 関税を支払いすぎてしまったため、関税の還付手続きを行おうとしたところ、

  会社に査察が入り、違反してもいない内容で罰金を科せられた。

通関トラブルの背景

  インドネシアで払いすぎた関税を還付してもらうというのは、ほとんど成功例を聞きません。

  反対に、会社を徹底的に調べられた挙句、納得のいかない税法違反などで関税とは関係のない

  追徴金などを徴収される例もあります。

  したがって、はじめから適正な手続きを行っておくということが非常に重要です。

  公的機関となる税関を通ってしまった後は、いかなる訂正にも何らかのペナルティが科されると

  考えておく必要があります。

⑤ 輸送中に「銘板」がさびてしまい、新品の設備にもかかわらず中古であると指摘されて通関が止まった。

通関トラブルの背景

  インドネシアでは多くの物品のうち、中古品に関して規制があるため、新品が中古品と誤認されたり、

  あるいは輸出者・輸入者が中古品を新品と偽ると罰則を科せられることがあります。

  まぎれもない新品の機械・設備を送ったものの、通関手続き中に錆が出てしまい、新品と認めて

  もらえなかったというようなこともあります。

  中古に間違えられると困るため、輸出前には毎回「化粧直し」のように追加で加工・磨きの手間を

  かけている会社も多くありますが、高温多湿環境下で長時間留め置かれるうちに、錆がまわってしまう

  ことも少なくありません。

  通関に時間がかかる事と、熱帯に相当する高温多湿の気候のため、「錆」に関しては他国への輸出とは

  異なり、細心の注意を要します。

  これはタイ、インド等、東南アジア、南アジアの熱帯地域でも同様だが、通関に時間がかかり、

  野ざらしにされる時間が長いという点を鑑みると、インドネシアはかなりその確率が高くなります。

  熱帯地域における錆防止には、シリカゲル(乾燥剤)だけではなく、気化性防錆紙によるラッピングで

  バリアする方法が一般的です。

  また防錆油を塗布するという方法もよく使われ、鋼材部分の表面に防錆効果のある塗料などを

  あらかじめ塗布、あるいは防錆機能を持とう鋼材を使う等も対策として考えられます。

  注意を要するのは、シリカゲル(乾燥剤)だけでは湿気しかとることができないため、

  熱帯地域等では防錆の効果が十分に見込めない点に注意です。

⑥ 設備機械の「銘板」に刻印されている記号と、インボイスに記載されている記号、品名とが相違しており

  現物との違いを指摘され通関が止まった。

通関トラブルの背景

  これはインドネシアに限った話ではなく、銘板や製品名を現物に刻印などしている場合、

  その内容とインボイス内容との違いは、通関上、現物検査となった場合に問題となることがあります。

⑦ 輸入申告時のHSコードの誤りがたびたび指摘されたため、インボイス自体にもHSコードを記載する

  ようにしたところ、輸入申告に使われているHSコードとインボイスに記載されているHSコードとの

  違いを指摘された。

通関トラブルの背景

  インボイスにHSコードを振って輸入通関業者や輸入者の助けとする考え方がある一方、

  税関からの誤解を招く可能性があるため、インボイスにはHSコードの記載を避けた方がよいという

  意見もあります。

  HSコードの性質上、輸出側と輸入側のコードが違うことは珍しいことではないため、

  それを輸出側の貿易書類であるインボイスでもって輸入側のHSコードを「指示」してしまうような

  方法もかなり問題があると考えられます。

  HSコードに関するやり取りは、インボイスではなく、別の手段で情報交換を行った方が無難です。

⑧ ラマダン(断食)明けに貨物を送ったところ、顧客からいつまで経っても届かないとのクレームが発生。

 

通関トラブルの背景

  日中に食物を口にしてはならないというイスラム固有の断食の習慣であるラマダン期間中や

  ラマダン明けの混雑には異様なものがあり、貨物の物損なども起きやすくなります。

  通関に時間がかかるだけではなく、こうしたリスクも考慮する必要があります。

  ラマダン期間中の輸送リードタイムは非常に読みづらいものがありますが、少なくとも通常の

  リードタイムに比べて7日以上はかかるものと想定しておいたほうがよいでしょう。

⑨ ジャカルタ港が混雑していたので、ドライポートを利用したところ通関のリードタイムが

  かえって時間を要した。

通関トラブルの背景

  インドネシアも通関の混雑状況の解消のため、港ではなく、海に隣接していない内陸部分に

  ドライポート (Dry port) を作り、そちらでの通関も可能としています。

  ただし、現在のところ期待されていたほどのメリットが出ておらず、ドライポートを使ったからと言って

  通関含めた輸送リードタイムが必ずしも短縮されるわけではないようです。

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